そこにアルのに見えないモノ
救助
「お疲れ様でした。
何だか今日はすみませんでした。思い出してしまって…長話をしてしまいました」
「どんな日もある。
声に出して話して、楽になることもある。
何度繰り返したっていいさ。
吐き出したい思いは口に出さなければズッと腹に篭る。
俺なんかでいいなら、いつでも、どんな事も話してくれていいから。
今日は遅くなった。気をつけて帰るんだよ」
「はい。お先にすみません。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
総一郎さんは煙草に火を点け、いつものように煙に顔をしかめた。
なんかあったら、電話しろよってサイン、耳に拳を近付けた。
Baronを出て通りを急いだ。
…寒〜い、襟を立てて、コツコツ歩いていると、いきなりだった。
「僕と、これから付き合ってよ〜。お嬢ちゃん」
後ろから腕を掴まれた。
咄嗟の事で何がなんだか解らない。
「っ、離して、離してください。お願いします」
腕を振り払おうと試みた。
「離さないよ〜。付き合ってくれるまで〜」
も゙う…しつこい。厄介な人に掴まった。アキヒコさんくらいの年齢の人かな。
かなり酔っている。乱暴な感じはしないけど。どうしたら上手くあしらえるんだろう…。
そうだ、総一郎さんに電話!
携帯を取り出しコールした。