そこにアルのに見えないモノ
凌平の心情


「…ただいま」

なるべく音を立てないように静かに鍵をかけ、そっと足を忍ばせ廊下を歩いた。どんなに気を配っても、古い造りは歩く度軋んだ。

母の部屋を覗いた。
…寝ているようだ。

ご飯は、少しは食べたようだ。
乾いた御飯が残ったままのお茶碗、食器がそのままテーブルに残されていた。…はぁ。

総一郎さんの番号、ワンギリした。
有難う総一郎さん。ごめんなさい心配かけて。


はぁ…疲れた…。
もう少し…。
あと少し‥。
総一郎さんのところで働いている分、全部返済に回して…。
もう少しで完済出来る。
はぁ…。

…それにしても、あの人…。
私を助けてくれた人。あの人は誰だったんだろう…。すぐ居なくなってしまって…。
ちゃんとお礼言いたかったのに。
急いでいたのかも知れない。それとも、助けてくれたこと、照れくさかったのかもしれない。

また、会えるだろうか。
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