そこにアルのに見えないモノ


勝手に決めて…連日、挨拶回りにつれまわされた。
世襲、俺は、こういう世界が嫌だった。
もう、逃げられないのか…。
話して埒があくことでもない。親父は独裁者だ。
やりたい事が出来ないなら、もうどうでもいいと思った。
だったら俺が会社潰してやるよくらいに…。

「今度、欲しかった技術者を手に入れる事が出来る。負債を見る事を条件にな」

親父が言う。どうせ親父の事だ、なるように追い込んだに違いない。

「そこには娘さんが居る。確か高校3年生だったかな。綺麗なお嬢さんだ」

俺は思ってもいない事を口にした。
そのお嬢さんとやらと結婚していいなら、まともに会社、継いでやるよ、と。
親父は真に受けた。
丸ごと引き受ける条件に結婚の話も付け加えたのだ。

そんな条件断って来るに違いない。
娘が可愛ければ、こんな腐ったところには渡せるはずがない。そう思っていた。

実際、その通りになった。話は断ってきた。当然だと思った。昔から決められてた政略結婚でもないのだから。

親父と俺が留守中に、顧問弁護士が代理に話を聞いていた。
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