そこにアルのに見えないモノ
「あの…こんばんは」
「…」
グスッ。…いけない。無防備だった。
「…少し、…お話しても大丈夫ですか?」
「…」
「星、綺麗ですよね、今夜は特によく見える…僕も時々ここに来るんです。…静かですよね。
一人なんだと…、感じる」
「…」
「すいません、自分勝手に話しかけたりして。
僕と同じように、というか、一人を感じたくて来られているのでしたら、僕の存在は邪魔でしたね」
一人を感じる…。この人もそんな思いで…?ここに…。
「…いいえ。ごめんなさい、大丈夫です。
…私だけの場所ではありませんから。変な話ですけど……どうして来てるのか解らないんです…。
綺麗な星空…、本当に綺麗…。
この星が見たいのか、癒されたいのか…。
ただ、月がない時に来れば、凄く星が綺麗に見られるんだと…、漠然と思っています。…多分、疲れているんだと思います…心が。
仕事でここを通ることがあって…、夜は星が綺麗なんだろうなぁと思ったら、この高台に来るようになっていました。…都合のいい気分屋ですね。ごめんなさい…、話しかけて頂いたのにすぐ言葉を返さなくて…」
「いいえ、いいんです。当たり前ですが、夜です。それに初対面、そういった意味でも僕は知らない怪しい男ですし、いきなり話しかけられたら警戒して当然です」
首を横に振る。警戒…そこまで身構えたつもりはない。
「違います。そういう訳ではないんです。
変な言い訳ですが、ただボーッとしていたかったので、…言葉を発するのが煩わしかったのです。…ごめんなさい。
貴方の事はよく知らない人ですけど、…何て言うか…、同じ人なんじゃないかと思っています」
「…同じ人?」
「…はい。ここでこうして…、誰にも邪魔されないで一人で星を眺めてる事を望む人だから…。私と同じかなって。
…きっと、何か…抱えているモノがある人…」