そこにアルのに見えないモノ
再会
日曜の夜。
高台に来ていた。
今夜も人影は無い。
いつもと違うのは、少し雲が出始め、満天の星は望め無いということ。
今夜あまり天気が良くない事は、初めから解っていた。
…月、上弦の月というのか。
月だって出ている…。
今夜来た理由は明確。
静けさの中に身を置きたかったから。
一人になりたかったからだ。
答えの出ない事、取り留めのない事をただ頭に浮かべたかったから。
転落防止の胸の高さまである木製の柵に身を預けた。星に気を取られてしまって崖下に転落してしまう人が居るかもしれない。
柵の上に乗せた両腕に顎を乗せた。
結局、空を眺め、ただボーッとしていた。
「…こんばんは。また会えましたね」
「え、あ、…こんばんは…」
また不意をつかれた。
「今夜は星よりも、雲がかかった月の方が物悲しい感じといったところですかね」
「…そうですね。星は殆ど見えませんね。雲も出て来ましたし」
「何事もありませんでしたか?あの後」
「…え?」
何事も?……何のことだろう。…あの後…?
「あの……何の…」
惚けているつもりはない。ピンと来るものがなかったからだ。
「酔っ払いのおじさんから逃げた後です」
「…え?あの、えっと‥、。え、あっ、あの時の、助けてくれた人は貴方だったんですか?」
そうだったんだ。
「一応はい、助けたと言うほどではありませんが」
「凄い…偶然…ぁ」