そこにアルのに見えないモノ
…お礼。
「あの時は有難うございました。本当に助かりました。恥ずかしいんですが、ああいった方のあしらいが未だ上手く出来なくて。いきなりの事に戸惑っていましたので。有難うございました」
ちゃんとお礼が言えて良かった。
「いえいえ、大した事はしてません。走って逃げただけですから。
ただ、最近は見た目に大人しそうな人でも豹変する事もよくあります。人は解りません、あのおじさんが逆恨み的に跡をつけないとも限りませんからね。家まで送らなかった手前、ずっと気掛かりでした。
あの後、何も無かったのなら安心しました、良かった」
「はい、大丈夫でした。
あの…、あの時お礼をキチンと言いたかったのですが、息が詰まってしまって、ごめんなさい、すぐ声が出なくて。恥ずかしいです、体力が無くて…」
「いやいや。あの時は僕もとにかく目茶苦茶に走りましたからね。却って走り過ぎましたね。申し訳なかったです。
…今日はクライアントとの打ち合わせの帰りなんですが。
何だかお互いの意思の疎通が計れなくてね。
考え方、変えてみないと、と思いましてね。それで何となくここに…」