そこにアルのに見えないモノ

「あれから、その、Kurosaki関連の事は何も？」

「はい。特に。私は何も…まだ確認すらしてません」

「…そうか。まあ、店にも来ないし。ひょっとしたら違うのかもな。
俺達が勝手に思い込んで気を揉んでるだけかも知れないんだし」

「…そうですね、まだ解りませんが」



カランカラン。

「いらっしゃいませ」

「いらっしゃいませ、アキヒコさん」

「カオルちゃん、嬉しいね〜」

「今日は、大丈夫なんですか？」

コートを預かり、席へ案内しながら尋ねた。
今夜はお連れの方が一緒だ。もう一人の方にも会釈した。

「ああ、奥さんの事？
大丈夫だよ。うちの財務大臣は寛大だからねぇ。
息抜きは許してくれるんだ。
でもね、内緒だよ？若いお姉ちゃんがいる店には行っちゃ駄目って言うんだ。単純な貴方はって。
ヤキモチかな〜。可愛いだろ？」

う～ん。ここと違ってお会計が跳ね上がる。それを心配してだと思う。ただ、高いお酒とか、ねだられるからじゃないかな〜。

「そうですね。奥様、アキヒコさんがモテてしまうのが心配なんでしょ、きっと」

「そうかい？言うね〜、カオルちゃんも」

「ウイスキーにされます？」

「ハイボール!と」

「唐揚げですか？」

「解ってるね〜カオルちゃん。頼むね〜」

「はい、畏まりました」

おしぼりを渡し、ナッツを置いた。

「お連れの方は何にされます…」