そこにアルのに見えないモノ
「有難うございました。お気をつけて」
「カオルちゃん、また来るからね〜」
アキヒコさんとシンジさんは、上機嫌で二人仲良く腕なんか組んで帰って行った。
ちょっとシンジさんがアキヒコさんに寄り掛かりながら…。酔ってるからあまり自覚もないだろうけど。
周りの人達が引き気味に見てるけど…、誤解は無いよね…。
しばらくボーッと見送っていると頭の上で総一郎さんの声がした。
「日中は毎日、真面目にそれなりに仕事してるんだ。このくらいの息抜きしなくちゃな。
会社でも家でも…雁字がらめって、堪えられないもんだぜ?
男は基本、弱いんだ」
「そんなものですか?」
「ああ、そんなもんだ。頑張って見せて、実は男は弱い生き物だ」
「へぇ…参考の為、覚えておきます」
「ああ、凄く大事な事だぞ。覚えておいて損はない」
頭を上からポンポンされた。
それからシンジさんは、アキヒコさんと一緒じゃ無くても訪れるようになり、お詫びのつもりだと思うご新規さんを何名か連れて来てくれた。
ご新規さんもいつしか常連さんになった。
「総一郎さん、人の縁て温かいモノですね」
「お、どうした急に。悟ったか?」
「クスクス、はい、少しだけ悟りました」