そこにアルのに見えないモノ


「おっ、どうした?お出迎えか?…なんだ、そんなに寂しかったのか?」

頭を撫でられた。…もう煙草吸ってる。

「あ、わっ、もう、総一郎さん。遅いじゃないですか」

「だから、寂しくさせて悪かったよ」

「それはどうでもいいんです」

「はっ、…どうでもいい?…割と冷たいじゃないか…」

遅かったからいじけてるのか?


「もう…。総一郎さん、名字、柾木って言うんですか?」

「どうした?」

「柾木さん居ますかって、今、本当に今の今、若い女性が訪ねて来たんです。すぐ戻るから待っててくださいって言ったんですけど、また来るって、帰ってしまって…」

「…そうか、大丈夫だ。多分…、それ、なぎさだ。俺を訪ねて来る“女性"は、なぎさくらいなもんだろ」

あっ、娘さん…。

「だったら、余計、いいんですか?会わなくても?」

せっかく来たのに…。

「大丈夫だ。本人がまた来るって言ったんだろ?
だったら、なぎさのタイミングでまた訪ねて来るだろう。大丈夫だ」

「あの、それより…」

「なんだ?まだ何かあるのか?」

「誤解させてしまったかも知れないです。強く否定したんですが…」

「誤解?」

「はい、私の事を“彼女”だって」
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