そこにアルのに見えないモノ
認識


落ち着いた日常を送っていると、考える余裕が少し出て来た気がする。

そういえば、一人になりたくて場所を求めていたのも、いつしか気にならなくなっていた。

お店のお客さんのお陰かな?

世の中の不条理を色々、さりげなく教わっている気がする。

何より総一郎さんのお陰である事は間違いない。


グラフィックデザイナー、黒崎凌平という人。

【Kurosaki】と関係ある人なのだろうか…。

名刺を眺めていたって、答えは永遠に出ない。
はっきりさせたいなら腹を括るしかない。

もし、あの黒崎の関係者だとしたら…。

ううん、解らないうちに先を考えてはいけない。まずコンタクトを取らなければ。
明日、明後日、Baronの出勤日ではない。
こちらの都合に合わせてくれるかどうか解らないが、とにかく、まず連絡だ。


ふぅ…。
何度も大きく息を吐いてみる。そこから中々先に進めない。

間違わないよう、名刺を手に、しっかり確かめながら数字をタッチする。

コール…してる。もう、後には引けない。

なかなか出ない。
時間が遅いからか‥、知らない番号だからか‥。

長くコールが続く。
もう、切ってしまおうか。そう思ったときだ。

「…はい?黒崎ですが…」

っ、出、た…。

「夜分申し訳ありません、望月と申します」
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