そこにアルのに見えないモノ


「名刺を…預かった者から受け取りました」

そこまで言って貧血になりそうなくらい緊張していた。
腰掛けていても倒れそうなくらいだ。息を吐いた。

「私を訪ねて来られたと伺いました」

「え?ちょ、ちょっと待ってください。
貴女は‥、貴女がBaronにいらっしゃる方なんですか?」

「はい、あの店で女性の従業員と言えば私で間違いありません」

何故?今更そんな確認を…、違うの?

尋常じゃないくらいバクバクして、何だか得体の知れない恐ろしさに堪えられなくなっきていた。
返されるであろう言葉が怖い。

「僕です」

「え…」

僕です。…何?どういう意味?

「高台で会って…貴女に…、好きだと告白した…」

「…えっ?」

…嘘…。

「…貴女を酔っ払いから逃がした…」

「えっ、…貴方が?」

ちょっと待って?!

「…はい」

「えー、そうだったんですか」

一気に緊張が解けた。こんな偶然なんてあるの?
楽観しようとしていた。黒崎は黒崎でも違うんだ、なんて思っていた。
次の言葉を聞くまでは。

「黒崎です…。望月 晶さん。
Kurosakiの息子の…黒崎凌平です」
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