そこにアルのに見えないモノ
僕は貴女を望月さんの娘さんだとは知らず、好きになりました。
晶さんという名前だけは親父から聞いて知っていました。
高校生だと言うこと、綺麗な娘さんだと言うこと、当時それだけです。顔までは知らなかった。
それっきりです。
貴女の住んでるところや、職業、どんな生活振りなのか、知りませんでした。
信じてくれますか?
高台で会ったのも偶然です。
貴女は僕の暗い部分、抱えているモノがある事に気づきました。
それは貴女も同じだったから。
貴女も抱えているモノに囚われていたから。
同じだと言った。重さは違うかも知れないけど、こうして此処に来ている事が、同じだと。
僕はこんな人が居るのかと驚いたんです。
人は楽しいこと、快楽を好んで求めます。
辛さを好む人はまず、いないはずです。
だから寄り添える人というのは、自分に辛い経験がある人なのです。
僕等は同じだ。僕の勝手な思いですが、他の人では駄目なんです。
極端な例えですが、底抜けに明るい人と一緒にずっと居られるかと言われたら、それは無理だと思います」