そこにアルのに見えないモノ
意思
「…帰りましょう。送ります…」
ただ車に乗っていただけの私は、どんな挨拶をして、どんな別れ方をしたのか覚えていない。
気がついたら、以前と同じ場所、送って貰った場所、迎えに来て貰った場所に立っていた。
これからどうなるのだろう。
なんとなく、好きだという互いの気持ちを確かめた気がした…。
…あ、こんな私、母と一緒に居られるだろうか…。
母が私の気持ちを知ったら…、どうなるのだろう…。
きっと悍ましいと思うだろう。
やはり私達は無理なのだ…。
気持ちを明かさないままなら、思い続けられたのかも知れない。
でも、それは一生報われないまま。思うだけの人。
…もし運命があったとするならば、あの時、結婚していたはず。
きっかけは政略であったとしても、出会って、お互いを知り合えば、今、幸せだったかも知れない…。
それも解らない事ではある。
例え思い合ったとしても、一緒に居る縁が無い事もあると言う事…。
体が震える。
私は私を抱きしめ、しゃがみ込んでしまった。
どうしたら…。
この思いは消さなければいけないモノ…。
無かった事に出来るだろうか…。