そこにアルのに見えないモノ
…Baron。
外灯は消えている。
…総一郎さん、まだ居るだろうか…
お店の前で躊躇していた。
いきなりドアが開いた。
「おっ、カオルちゃん、どうした?休みの日にワザワザ。
俺に会いたくなったか?」
店に鍵をかける。
「…総一郎さん」
私は総一郎さんの胸に飛び込んだ。
「おっと、どうした…。泣いてるのか?
はぁ…俺、家帰るところなんだけどな…。
うち来るか?ん?」
総一郎さんは少し離して私の顔をジッと見て、聞いた。
「…はい。連れて行ってください」
頷くと、胸に顔を戻され頭を撫でられた。
「泣くんじゃない…、じゃあ、帰るとするか、な?」
総一郎さんは私の涙を手の甲で拭い、手を取ってギュッと握った。
温かい…。
「カオルちゃん…。
…まあ、いい。俺からは何も聞かない。
大人だもんな」