そこにアルのに見えないモノ


「怖いか?俺の言う事が怖いか?

…怒ってる訳じゃない。

説教するつもりは無いけど。今の晶ちゃんは隙だらけだ。
現に今、簡単に俺に抱かれちまっただろ?」

「それは…」

「俺の事、父親みたいに思って安心してるか?

俺だっておっさんだけど、一応男なんだぞ?

もっとしっかりしろ。…全く。
煙草吸うぞ」


総一郎さんはまたしかめっ面をしている。


煙草を灰皿に押し付け消した。

両手で顔を包まれ、親指で涙を拭われた。

「晶…泣くんじゃない」

フワッと抱きしめられる。
バーボンの香りがする。

「流されて後悔しないなら、俺はお前を抱く。
…忘れるまで…、ずっと抱いてやるから」

苦しい、胸が切なくて苦しい。

涙がまた流れる。

「総一郎さん…」

総一郎さんに腕を回した。

顎に手を当てられ上向かされる。

「駄目になるまで頑張ってみようとしなくていいのか?諦めるのか?

誰になんと思われようと、二人がいいならやって行けるんじゃないのか?
そうしようとしなくていいのか?

晶が自分で決めるんだ…後悔しないのか?」

「はい、…忘れさせてくださ…」

言い終わらない内に唇を強く塞がれた。

そのまま床に倒され、深くて優しい口づけが続く。

これが煙草の味…、ピリピリ痺れる感じがする。
バーボンの香りもする…。

身体の芯が疼くように脈打ち始める。鼓動が速くなる。

唇が離れ抱き上げられた。

「…ベッド行こう。狭いけどな」

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