そこにアルのに見えないモノ
「晶さん、貴女と普通に出会いたかった…。
今更言っても、どうにもならない事ですが…、強引に結婚して置けば良かった、出来る事なら…。
いいや、永遠に叶わない…。
出会って…、普通に惹かれて恋したのに…。
こんなにも苦しい事になるなんて…。
しつこい程言葉を繰り返しても、どんなに思っても、堂々巡りなのですよね…。
好きです…、ずっと好きです…」
黒崎さんは泣いていた。
「…僕の最後の暴挙、許してください…」
あっという間だった。
いきなり両手で顔を包まれ、熱烈な口づけに見舞われた。
「んなっ!」
静かに見守っていた総一郎さんが短く声を発した。
「永遠に愛しています」
黒崎さんはそう言って代金を置き、足速に去って行った。
また、酔ったおじ様達から歓声が上がった。
…こんな…、こんな終わらせ方…。
ボーッとなりながらも冷静に考えてみる。
きっと、黒崎さんもどうにも出来ない気持ちをどうしたらいいのか、ずっと、…ずっと考えて、悩んで苦しんだのだと思う。忘れる為に。
そして、この感情は直ぐにはどうにも出来ないと思ったのだ。
私達は、やはり、同じなのだろうか…。