そこにアルのに見えないモノ
「晶、俺…、明日、元嫁と娘に会ってくるよ」
「はい」
「晶との事、誤解が本当に成ったって言っとかないとな。
なぎさがまた誤解すると、ややこしくなる」
「はい」
「心配するな。嫁と元サヤとか、そんな事にはならないから。
なぎさもあれから来ないし、なんか用があるのかも知れない。
とにかく、会ってくる」
「解りました…」
「…そんな顔するな。話をしてくるだけだ。
ちゃんと帰って来るから…。
夜、店だってあるし」
「うぅ…は、い」
俯いて返事をした。
「どうした?
…不安になったか?ん?」
顔を覗き込まれた。
声が出せない。頷いた。
「馬鹿だな…、ん?
泣いてるのか?
…泣かなくていい。
晶…、妬いてくれてるのか?」
涙を拭いてくれながら問われる。
コクン、コクン頷く。
晶…。
俺は抱きしめた。ギュッと強く抱き込んだ。
離したくない。可愛くて堪らない。
年甲斐もなく、胸が苦しい…。
「晶?心配ないから。
俺、晶の事、好きだって、一杯ノロケてくるよ。
な?だから心配するな」
俺は晶のおでこに軽く口づけた。
何故おでこ止まりかって?
只今、Baron営業中だからだ。
これでも、持てる理性をフル発動しているんだ。
「晶、今日は俺ん家に一緒に帰るぞ。
最上級に優しくする」
−完−