そこにアルのに見えないモノ
「…総一郎さん。みんなの心が大人になって、色々な立場でモノを考えられるようになったら、と言いますか、多分もう娘さんはとっくに理解されてますよね。
奥さんだって。嫌いってことではないと思います。誰より総一郎さんの事を理解していたからこそ、決断されたのだと思います。自由にしてないと駄目な人なんだって。だからお互いがもうこれ以上辛くならないように、って。
後は、自然の流れで…、会いたいと思えば、話はいつでも出来るんじゃないでしょうか。
すいません、小娘が解ったような口をきいて」
「いいや、有難う。言いたい事はよく解る。
俺は頭では解っていても勇気が無いんだよ。
情けないだろう?歳くったって、大して成長してないんだよ。自分の口で、自分の言葉で話さなきゃ。解ってはいるんだ。ずっと気にしながらズルズルしている。
ちゃんと会って、ちゃんと謝らなきゃな」
「私も…、会えるものなら、父に会って謝りたいです。言う通りにしていたら、父は自殺なんかしなくて良かったのに…」
「…お父さんは解ってるよ。
カオルちゃんは今出来ること、頑張ってるじゃないか。お父さんにはお父さんの思いがあったから、無理強いしなかったんだと思うよ?
カオルちゃんが可愛かったから。カオルちゃんにはカオルちゃんの人生がある…カオルちゃんの将来を思っての事だよ。
俺が勝手に代弁は出来ないけどね。きっとそうだったと思うよ」