あしたの音色
きょうという日

十数年前の今日、私はこの世に生まれおちた。
きょうという日を、楽しみに生きてきたわけでもない、ただ、時がすぎるのを待ってすごしていた。
毎日、繰り返しの日々。
同じようなことをして、すぎていく日々に、私は満足をしているわけでも、不満があるわけでも、ない。
ただ、時がすぎるのを待つだけ。
今まで…どれだけ、多くの本を読んだだろう。
どれだけ、退屈しのぎに文明の利器にすがっただろう。
どれだけ、多くの時間を無駄にして生きてきたのだろう。
私はこの世に生まれて、よかったのだろうか。
目の前で、私の過去の誕生を祝っている両親は私に満足しているのだろうか。
どれだけ、多くの両親の期待を裏切ってきたのだろう。
私は、この退屈な毎日に、終止符を打ちたかった。
でも、それもできなかった。
できるはずがなかった。
私には、死ぬ勇気もなかった。
覚悟なんか、初めから捨てていた。
「生きる」覚悟も、「死ぬ」覚悟も。





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