あしたの音色
10年前の交通事故だった。
あなたは、私の目の前で死んだ。
誰よりも、あなたが傷つくところを見たくなかった私の、目の前で。
車に撥ねられた。
首がありえない角度に曲がってしまったあなたは即死だった。
私は一生、あのトラックの運転手を恨むだろう。
でも、トラックの運転手もまた、心筋梗塞で死んでいたのだった。
気持ちに、やり場を与えられなかった私は壊れた。
あなたには身内がいなかった。
私が、全部見送って。
葬儀とまではいかないけど、埋葬した。
だから、私の死に場所はあそこだと決まっているのだ。
優しいあなたを失って。
私は気がついた。
ようやく気がついた。
「私は......あなたのことが好きだった。」