あしたの音色
刃はあなたにも向けられていた。
いつから。
いつからあなたは。
苦しい思いをしていたの。
私には必死に隠して。
どうして。
苦しかったでしょう。
どれだけの傷を、私に隠してきたの。
私をかばうたびに、あなたに傷が増えていく。


「ただちょっと転んだだけだよ。」


嗚呼、そんな顔しないで。
つらいんでしょう。
我慢なんてしないで。
全部、全部、私のせい。

廃れていく私の中にある世界。
錆びれた司令塔は、人形と化した私の骸を拾うこともなく、ただ、有り続ける。
意味もなくなった場所は捨てて。
私は、あなたを、かばった。
勇気なんて、生憎、持ち合わせていないけど。
どうしても、あなたを守りたかった。
あなたが傷ついていく姿は見たくなかった。
涙を流して。
歯を食いしばった。
冷たい氷のような水をかけられたって。
自分の膝から血が出たって。
あなたが傷つくよりましだった。



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