クール男子の取扱説明書
「……ちょっと、なにしてんの」
この人、絶対今の俺のお礼聞こえてなかったよね。
俺は、石原さんの両耳に当てられた手を取った。
「い、いいい今井くんが私にありがとうって……」
「聞こえてたんだ」
それにしても、失礼な。俺だってお礼くらいするわ。
「あ、の……今井くん」
「なに」
「そろそろ……ね」
もったいぶらずに言えよって言うと、石原さんは顔をゆでダコみたいに真っ赤にしてこう言った。
「手を離してくれませんか……?」
「え?」
バッと自分の手を見る。
さっき、耳から手をとった時に握っていた。
無意識だった。
無意識に石原さんの手を握っていた。