クール男子の取扱説明書



「……ちょっと、なにしてんの」


この人、絶対今の俺のお礼聞こえてなかったよね。

俺は、石原さんの両耳に当てられた手を取った。



「い、いいい今井くんが私にありがとうって……」


「聞こえてたんだ」



それにしても、失礼な。俺だってお礼くらいするわ。



「あ、の……今井くん」


「なに」


「そろそろ……ね」


もったいぶらずに言えよって言うと、石原さんは顔をゆでダコみたいに真っ赤にしてこう言った。


「手を離してくれませんか……?」


「え?」


バッと自分の手を見る。
さっき、耳から手をとった時に握っていた。
無意識だった。
無意識に石原さんの手を握っていた。


< 210 / 452 >

この作品をシェア

pagetop