生徒会長の言う通り
俺は琴葉よりも前へ進み少しずつ速度を落とす。


『さっきの笑った顔はよかったよ。
これは、ちゃんとした本音だからな』


ふっと笑うと琴葉が不思議な行動をした。

顔は薄く赤くなり、鼻の下をスリスリと指で擦る。




『…せこいです。』



『なにか言ったか~?』



聞こえていたのに聞こえていないふりをした俺に後悔した。



聞こえていないふりをしても意味は無い


知っているのに、何故だか身体が拒否反応を起こしたんだ


『いえ、なにもないです。』




焦った様子もなく言い換える琴葉。



俺は、返事をせずに口笛を吹きながらいつも通う通学路を通る。



俺達は校門を通り玄関で別れようとした時。


琴葉は、俯きながらそっと呟き俺に問いただす。


『先生、先生は今幸せですか?』




そう、言われた。




突拍子もない言葉に俺は後ずさりをする。


さくりとなにかささったようになって、抜けないんだ。



最後まで抜けない



幸せ?


俺は、幸せだよ。



お前がいない未来は面白くないとか吹きかけたけど。



面白い世の中だったよ。




寂しいとは思わなかった



全部嘘とは言わない。
けど、


半数は嘘なんだと後から気づくんだ。





嘘を吹きかけて楽しかったのかはわからない。











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