キミが幸せに。
「その日……部活ないの?」
湊太は困ると髪を触る癖がある。
あたしの問いかけに湊太は前髪を指で触った。
「いや、その日はさ……――」
苦し紛れに言い訳しようとする湊太を見たくなかった。
あたしは湊太の言葉をさえぎった。
「ありがとう、湊太。でもあたし、その日予定があるんだ。だから今度にしよう?」
「そうなのか……?」
「うん。ごめんね?」
あたしが謝ると、湊太はどこかホッとした表情を浮かべる。
ごめんね、湊太。
あたし……湊太に負担をかけてるね……。
「いや、いいって。でも、近々どっか行こうな?遊園地とか水族館とか全然連れて行ってあげられてないから」
「そんなの気にしないでよ~。それに、あたしは湊太と一緒にいられるだけで幸せだから。こうやって一緒に帰れるのも嬉しいもん」
それが本心だった。