キミが幸せに。

「で、シュウは桐谷ともうキスしたのかよ」


桐谷ってあたしのこと……?


自分のことを話していると知って、ドキッとした。


背中を教室の扉にくっつけたまま、いけないとは分かっていたけれど盗み聞きしてしまった。


「いや、まだ。つーか、俺達まだ手も繋いでないし」


「ハァ!?マジかよ!!じゃあ、お前の負けだな!!」


「いやー、俺も予想外だったんだんだよ。梨子にその気がないみたいでさ。意外とガード固かったし」


「シュウでもお手上げなことってあるんだな?」


「……みたいだな」


シュウの落胆の声と周りの笑い声に体が凍りつく。


負けって……なに?


怖い。その続きを聞いてしまいたくない。


そう思っているのに、足が床から離れてくれなかった。
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