天使が私に落ちてくる
その日のママ役は、佳奈ちゃんでパパ役はやっぱり天使だった。朝ご飯を食べて、会社に行く天使は佳奈ちゃんにお世話されてネクタイを結んだり、ワイシャツの襟を直してもらったりしていた。
にゃんこ役のあたしから見ても、佳奈ちゃんは天使のことが大好きで少しでも構いたくてしかたないようだった。
一方、天使は内気なので積極的にオママゴトに参加している風には見えなかった。
「パパ行ってらっしやい」
「……行ってきます」
笑ったら可愛いのに、むすりとした天使は表情を変えることなく会社に行くことにしたらしい。
ママ役の佳奈ちゃんや子供役の子達に手を振って、天使はあたしの方へやって来た。
「みーちゃん、行ってきます」
そう言って、座っていたあたしの頭を撫でてきた。佳奈ちゃんやほかのお友達には背中を向けていて見えないだろうけれど、天使は目を細めてにっこり笑顔だった。
保育園では激レアな笑顔に、胸がドキドキした。