天使が私に落ちてくる
「僕は王子綺羅ね、ほら知らない人じゃないでしょう? 」
そうきたか。ウザイだけなんだけど。とてもじゃないけど本名だとは思えない。なにそのキラキラネーム。
「さようなら」
ぺこり。お辞儀をして逃げようとしたら、首筋のあたりの服をつままれて、吊し上げられた。
「ねええぇいいでしょう、ちょっとくらい」
「いやです」
吊されたエイリアン状態で、果敢にも猫パンチを繰り出してみるも、届かない。
くやしいが、オタク(仮定)のわりには背が高い。あたしが、ちっちゃいからじゃないんだから!
まったく天使といると、こういう人の標的になるから困る。ちらりと天使を見ると、おろおろと顔をひきつらせて震えている。
「ゆ…結香ちゃんを離して……」
吊しあげられているのはあたしなのに、なんだか助けてあげなくちゃいけないくらいプルプルしている。
言葉だって尻すぼみに消えてしまいそうなのに、頑張ってるのが伝わってきた。
仕方ないなぁ。
吊しあげられている手を両手で掴んで、相手の背中側にまわる。そうすると、掴んでいた手が開くので腕を背中側に捻りあげる。