天使が私に落ちてくる
下を向くと、ぱたぱたと汗がしたたっていく。その汗をぐいぐい手の甲で拭って顔をあげると、真っ赤な顔をした天使がそばにいた。
荒い息の下で、手を伸ばしてギュッとつなぐ。
「……い…いっしょに……かえろ」
息が整わなくて喋れないので、こくんとうなずく。
「……うちに……寄っていって。結香ちゃんのママのお仕事が終わるまででいいから。今、ひとりで家に帰っちゃダメだよ……」
逃げるのを阻止するみたいに、ギュッと手のひらに力がこもる。
「今日は、イチゴのムースだって。好きだよね? 」
またこくんとうなずく。
いま口を開けたなら、わあわあ大きな声がこぼれてしまいそうで。鼻の奥がつんと痛くて、目の前がにじんでいく。
ぼんやりした景色の中でも、天使はキラキラとしてかわいくて、どこまでも綺麗だった。
こんな醜くってイヤな自分をさらに天使に見せる気にはなれないので、唇を噛んで言葉を飲み込む。