オフィスの恋愛事情
「嘘ばっか、いつも私のこと、振り回してるのは、碧君だよ」



私は、口を尖らせて見た。



「あ、アヒル口?かわいこぶってる?」




「ぶってないよ、私は可愛いのよ」




「知ってるよ。可愛いって思ってなかったら、二人で会わないし」



碧君は、繋いだ手をぎゅっとした。



私の胸も、同時にきゅううっとしたような気がした。




二人で柵にあごを乗せて、ぼんやりミーアキャットが穴を掘るのを見ている休日。私たちって、ぼんやりした天然カップルに見えるんだろうな。



でも、全然悪くない。秋の短い日差しが、背中に当たって、あったかいもの。



それから、碧くんは、私の頭をなでた。



私は、笑顔で碧君を見つめた。



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