オフィスの恋愛事情
「みなお、物足りなそうな顔してる」


「え?」



「俺のこと、好きになっちゃった?」



碧君は囁いた。



電車の中で、隣同士に座って、碧君は、私の肩に寄りかかって、上目遣いで、私を見た。



その大きな瞳は、憂いを帯びて、欲望の色が見えた。



途端に私の胸は、碧君に聞こえそうなほどに、高鳴った。



「碧君は、私に、愛があるの?」



私は、無意識に呟いた。



碧君は、少し困ったような顔をして、傾けていた身体を戻した。



「さあ、みなおが教えてよ」



碧君は、笑いかけた。



このまま、私と一緒に電車に乗っていて欲しいと思った。


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