PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


わたしは周囲を見渡した。


レトロなヨーロッパ調の駅舎。


タイル敷きの北口広場。


そして、嫦娥《じょうが》公園。



「なつかしいな、ここ」


「お嬢、このへん来るの?」


「子どものころ、おばあちゃんと一緒にね。よく嫦娥公園の祠《ほこら》まで来てたの」


「あ、その祠、知ってるよ! 永遠の美のご利益があるって」


「そうそう。不老長寿のご利益もね。月の女神さまがまつってあるんだって」



おばあちゃんはいつも、わたしに「願いは月に託しなさい」と言って、嫦娥公園の祠の前で手を合わせてみせた。


わたしはもちろん、おばあちゃん真似をして、願いがあるときには月を仰ぐようになった。





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