PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
「あれ? あの子……」
嫦娥公園の出入口のそばに、長い黒髪の女の子が立っている。
色白で、キレイな顔立ちの子だ。
どこかで会ったことがある気がする。
襄陽学園の子かな。ライヴの開始を待っているの?
電車がときどきやって来ては、学校帰りや会社帰りの人たちを吐き出していく。
そのうちの幾人かが北口広場のライヴ会場で足を止める。
あの人たち、きっと瑪都流のファンなんだ。
文徳先輩がマイクに声を通した。
「煥、そろそろ出てこい。ライヴ、始めるぞ」
歓声と拍手が起こった。
煥先輩が隅のベンチを立って、歩いてくる。
文徳先輩が、ギュンッとギターを鳴らした。
亜美先輩と雄先輩も、呼応して音を出す。
牛富先輩がパソコンの画面をチェックしてうなずく。
ああ、始まるんだ。
期待で胸がドキドキする。