PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
ロックという音楽を、わたしはよく知らない。
うるさそうで不良っぽいイメージだけがある。
違うんだ、と感じた。
わたしの先入観はたぶん正しくない。
躍動。等身大。正直。
音に込められたメッセージが聴こえてくる。
音の鼓動に、胸が馴染んでいく。
文徳先輩が、えくぼのできる笑い方をした。
牛富先輩、雄先輩、亜美先輩。
順繰りに目配せをしてうなずき合って、そして、マイクに触れない声が呼んだ。
あきら。
煥先輩は前髪に表情を隠してうつむいたまま、一つ、うなずく。
それから、ふっと空を見上げた。
深く息を吸う。
煥先輩は正面を向いて目を閉じた。