PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
ギャップといえば、煥《あきら》先輩だ。
歌っている煥先輩は、普段とは別人だった。
無愛想で無表情でぶっきらぼうな人だと思っていたのに。
前髪に隠れがちな目も、特別な響きを持つ声も、高い音も低い音も、ささやくときも叫ぶときも、煥先輩の存在はどこまでも正直だった。
だんだん集まってくる聴衆の真ん中に、煥先輩は立っていた。
それなのに、微塵《みじん》もカッコつけていなかった。
泥だらけの剥《む》き出しのままを歌っていた。
消えそうなくらい透き通る瞬間があった。
轟音のステージを支配しているようにも見えた。
すごく不思議な人だと思った。
瑪都流の曲は、文徳先輩が作っている。
歌詞は煥先輩の担当だ。
アレンジはみんなで試行錯誤して、録音とミックスは牛富先輩が担っている。
MCで、そんなふうに文徳先輩が言っていた。