PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


「最初の曲は、新曲でした! 今日ここで披露したのが初めてです。というか、歌詞がなかなか完成しなくて、完全に固まったのが昨日の朝でした。

本気で出来立てホヤホヤなんですよ。なあ、煥?」



煥先輩はマイクから下がって、ただうなずいた。


MCの間、煥先輩はペットボトルの水を口に含むことがある程度で、声を出さないのはもちろん仕草も表情もなくて、存在自体が本当に静かだった。



「おい、煥。新曲のタイトルくらい、自分で言えよ。苦労して決めたんだろ?」


「ビターナイトメッセージ」


「もうちょっと演出ってもんがあるだろうが!」



MCでは、たくさん笑わせてもらった。


文徳先輩と煥先輩、仲がいいんだ。



ライヴの後、二十一時を回るころには聴衆はみんな帰っていった。


不良っぽい格好の集団もいたけれど、最前列で体操座りをして演奏を聴く姿はとても素直そうだった。


ゴミを散らかしたりもせず、逆にゴミ拾いをしながら帰っていった。


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