PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―

「ぼくがやるから、痛くありませんよ」



ライヴの後、約束どおり家まで送ってもらった。


煥《あきら》先輩だけじゃなくて、文徳《ふみのり》先輩も一緒に来てくれた。


帰り道で、煥先輩は一言もしゃべらなかった。



翌朝。


迎えに来てくれた煥先輩はやっぱり黙り込んでいた。



煥先輩はもともと口数が少ない人だ。


でも、あまりにも沈黙が長い。



わたしを許す気はないんだと思う。


文徳先輩に言われるから護衛をしてくれるけれど、本当は近寄りたくもない相手のはず。



「つらいなぁ」



始業前の教室で、わたしは思わずこぼしてしまった。


三日月のアミュレットを付けたポーチを抱きしめる。


< 182 / 555 >

この作品をシェア

pagetop