PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
「その言葉を信じる」
視界にあるのは夜空だった。
満月に少し足りない、明るい月。
ほどほどに都会の夜景にかすむ星々。
「鈴蘭?」
呼ばれて、ハッとする。
亜美先輩がわたしの肩をそっと抱いた。
振り返ると、赤い特攻服の男が二人、伸びている。
ライヴの後の光景。嫦娥《じょうが》公園の裏だ。
亜美先輩が緋炎《ひえん》の二人を倒して、わたしは亜美先輩を刺さなかった。
時間が巻き戻った。
ポーチの中で、ツルギの柄の形をした青獣珠が不機嫌そうな鼓動を刻んでいる。
逆流して再開した時間のあり方を気持ち悪がっている。
長江先輩と海牙さんは違反者じゃなかった。