PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
母は先代の預かり手だ。
わたしが生まれる前はチカラを使えた。
生まれ落ちたわたしが母のチカラを引き継いだから、今の母はチカラを持たない。
隠し事をよしとしない母に、すべて話してしまおうか。
恋の悩みも預かり手の事情も。
口を開いたところで、声がのどの奥で凍った。
わたしが果たすべき役割の重みが、寝不足の頭をガンと殴った。
己が預かる宝珠に願いを掛けることは禁忌で、ツルギは、禁忌を犯した預かり手を排除するための武器だ。
違反者はわたしじゃないと言いたい。
でも、わからない。
もしも違反者がわたしなら、わたしはもうすぐ殺される。
そんなこと、母には言えない。