PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


わたしはフォークとナイフを置いた。



「失恋したみたいなの」



ありふれた高校生の悩みを口にする。


そう、こっちの問題だって、胸が痛い。



「失恋したではなく、したみたいと表現するのは、どういうこと?」


「その人が彼女持ちだって知らずに好きになって、それで、わたしが勝手に自爆した感じ」


「ああ、なるほど」



母は優雅に紅茶を口に含んだ。


年齢より若々しい美貌を誇る母は、貿易会社の会長秘書の仕事をしている。


会長というのは、わたしのおじいちゃん。母にとっては実の父親だ。



おじいちゃんは安豊寺家の入り婿だ。


安豊寺家は昔から財力があるけれど、おじいちゃんはそれに頼らず、自力で自分の会社を大きくした。


そういうたくましさがあればこそ、おばあちゃんはおじいちゃんに惚れたんだそうだ。


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