PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
「運命はまるで多数の枝を持つ大樹だ、と『秘録』には書かれています。つまり、運命には枝分かれの可能性がある。
この一枝とよく似た別の枝がほかに存在する。別の枝というのは、現代的に言えばパラレルワールドですね」
「運命の大樹、ですか」
「ええ。そこまでが『四獣聖珠秘録』に書かれた内容で、ここからは平井さんの受け売りです。
枝という例えを使って語れば、今ぼくたちが存在するこの一枝は正常に生長していません」
「何が起こってるんですか?」
「この一枝は一度、今より数年後の未来まで伸びた。けれど、あることが原因で、成長が巻き戻った。
巻き戻しは、病です。この一枝は病んでいるんですよ。原因が取り除かれない限り、病み続けるでしょう」