PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


煥先輩が低い声で訊いた。



「自分が殺された場面も覚えてるか?」


「おそらく」


「おれも、たぶん」


「鈴蘭は?」



わたしは息を呑む。



「自分が殺された場面?」



わたしは、殺戮《さつりく》の場面を外から見ていた気がする。


でも、あの願いを内側から聞いていた気もする。


あのとき、わたしはどこにいたの?



海牙さんが目を細めた。



「ツルギを振るう人物の姿、見てないんですか?」


「えっと……」


「ぼくは黒髪の女性だと思いましたよ。皆さんも見たでしょう?」



沈黙。


チャイムが鳴った。


海牙さんは、帰ります、と言ってきびすを返した。


ヒラリとフェンスを越えて、飛び降りていく。


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