PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
煥先輩は、ぶっきらぼうにわたしに言った。
「授業、遅れるぞ。さっさと教室に帰れ」
わたしはのろのろと立ち上がった。
視界の高さが変わると、赤い色が見えた。
「煥先輩、ケガしてます。左の頬」
一文字の切り傷だ。
煥先輩は傷に触れた。
長い指の先に付いた血をじっと見て、ぺろりとなめる。
わたしはドキッとした。
煥先輩の舌も唇も柔らかそうだった。
少し節っぽい指の形がキレイだ。
えぐみがあって塩辛い血の味は知っているのに、煥先輩の血は、なんだか甘いもののように見えた。
色気という言葉の意味がわかった気がする。