PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
「傷、治します」
「いらねえ。このくらい、すぐ治る」
「治させてください。ライヴのとき、お客さんに心配されますよ」
煥先輩はうんざりした表情で、わたしのほうに左頬を向けた。
わたしは煥先輩の左頬に手をかざした。
吐き切った息を、ゆっくりと吸う。
淡い青色の光が手のひらから染み出して、傷の痛みを絡めて吸い取っていく。
チリッと、わたしの左頬に熱が走った。
ケガをしたことのない場所に、感じたことのない痛みがある。
一度、息を吐く。
再び息を吸う。
スーッと、痛みが引いた。
煥先輩の頬に、もう傷はない。わたしは手を下ろした。