PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
「わたし、教室に戻ります」
つぶやいて、逃げ出す。
「鈴蘭」
呼び止められて振り返ると、煥先輩はこっちを見ていなかった。
「何ですか?」
「……ありがとう」
お礼なんて、不意打ちすぎる。
わたしはあせって、話をそらした。
「ほ、放課後、かわいい子を紹介しますね。煥先輩のこと好きなんだって」
煥先輩がリアクションする前に、わたしはドアに飛び込んだ。
授業開始ギリギリに教室に戻った。
小夜子が後ろからわたしをつついた。
「鈴蘭、顔色悪いよ。昼休み、どうしてたの?」
「ちょっとね」
「保健室、行ってきたら?」
「んー、ただの寝不足だから大丈夫」