PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
「だから、ノーカウントだろ」
視界の高さに青空がある。
グラウンドを吹き抜けた埃っぽい風がわたしの髪をさらった。
「屋上?」
昼休みの屋上だ。
海牙さんが、長江先輩を刺して自分ののどを裂いて、検証をしてみせた場面。
時間が巻き戻った。
煥《あきら》先輩は違反者じゃなかった。
我に返った煥先輩が、ぶるっと頭を振った。
「海牙、てめえ!」
煥先輩が踏み込もうとしたそのとき、海牙さんが口を押さえてうずくまった。
コンクリートの床にひざを突いて背中を丸める。
「……ッ、う……っ」
海牙さんの背中が苦しげにビクリと震えた。
波打つ髪が、乱れながら顔を隠す。
吐いているらしい。