PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
ちょっと待って、煥先輩。
違う。誤解です。
確かに、わたしは文徳先輩のことが好きだった。
でも煥先輩、今は違うんです。
わたしの命を救ってくれたのは、あなたです。
必死で痛みに耐えてくれたのは、あなたです。
わたしの心を揺さぶったのは、あなたです。
抱きしめてくれた腕。
触れていた唇。
見つめてくれたまなざし。
全部全部、わたしは覚えている。
ノーカウントだなんて言いたくない。
「煥先輩、わたしは……っ」
ドアを開けた煥先輩が、振り返りもせずにドアの向こうに消えた。
ドアが閉まった。
心に穴が開いた気がした。