PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


天井がにじんでいる。


嗚咽《おえつ》で息が詰まる。



胸が、体の奥が、とても痛くて苦しい。


胃が痛むのとは違う場所がギュッとよじれて、きしんでいる。



切ないって、こういうことなんだ。



ノーカウントだろ、と言った煥先輩の乾いた口調がリフレインしている。


キスしたのに。


覚えているのに。


大切な瞬間だったのに。



自分の唇に触れてみる。


キスをした証拠なんて何も残っていない。



未来の自分に訊いてみたい。


わたしは宝珠に何を願うの?


月に願うのと同じことを?


恋を叶えたいって言うの?


誰との恋を叶えるの?



自分の願いが、もうわからない。


ポーチに付けた、三日月のアミュレット。


恋に効くはずのお守りは何も導いてくれない。


< 324 / 555 >

この作品をシェア

pagetop