PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
天井がにじんでいる。
嗚咽《おえつ》で息が詰まる。
胸が、体の奥が、とても痛くて苦しい。
胃が痛むのとは違う場所がギュッとよじれて、きしんでいる。
切ないって、こういうことなんだ。
ノーカウントだろ、と言った煥先輩の乾いた口調がリフレインしている。
キスしたのに。
覚えているのに。
大切な瞬間だったのに。
自分の唇に触れてみる。
キスをした証拠なんて何も残っていない。
未来の自分に訊いてみたい。
わたしは宝珠に何を願うの?
月に願うのと同じことを?
恋を叶えたいって言うの?
誰との恋を叶えるの?
自分の願いが、もうわからない。
ポーチに付けた、三日月のアミュレット。
恋に効くはずのお守りは何も導いてくれない。