PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
「悪ぃ……歌えねえ……」
五時間目の終了を告げるチャイムが鳴ると、デスクに突っ伏した先生が、ハッと起き上がった。
ああもう睡眠不足なんだからと、つぶやいて、それから胸を押さえて小さな悲鳴をあげる。
そうだった。長江先輩のいたずら。
告げ口のしようもないから黙っておく。
わたしはまだ教室に戻れる気分じゃなかった。
でも、本当に熱のある人が保健室にやって来たから、熱のないわたしはベッドを譲るべきだと思った。
「失礼しました」
ポーチを胸に抱いて保健室を出る。
その途端、声をかけられた。
「鈴蘭さん、体調はもう大丈夫?」
文徳《ふみのり》先輩がそこに立っていた。