PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
わたしはうなずいた。
声がうまく出ない。
小夜子には軽音部室に来てほしくなかった。
黙っていようと考えていたのに。
文徳先輩がわたしと小夜子を見比べた。
「鈴蘭さんと同じクラス、かな?」
小夜子は文徳先輩にペコッと頭を下げた。
「進学科一年の玉宮小夜子です。あのぉ、ひょっとして、瑪都流《バァトル》の伊呂波《いろは》文徳さん?」
「おれのこと、知ってるんだ?」
小夜子がパッと顔を輝かせた。
「わたし、瑪都流のファンなんです! 特に煥さんの大ファンで! 今から練習なんですか?」
文徳先輩が気遣わしげな目でわたしを見た。
わたしは無理やり微笑んだ。
「小夜子は、煥先輩と話してみたいんだそうです」