PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―


勢い込んで、小夜子は言った。



「煥さんが来るまで待たせてもらえませんかっ?」



文徳先輩がちょっと悩む顔をした。



「んー、普段はそういうの、断ってるんだけど」


「ご迷惑にはならないようにします! 今日だけでいいんです! お願いします!」


「まあ……約束してくれるなら。だけど、煥が来るかどうか、わからないよ」


「えっ?」



わたしと小夜子は同時に声をあげた。


文徳先輩は栗色の頭を掻いた。



「今日の昼休みの様子だと、歌える感じじゃなかった。あいつの歌、精神面に左右されるからさ、ダメなときはほんとにダメなんだよ。そういう日は練習に来ない」



小夜子が泣きそうな顔をした。


わたしもたぶん似たようなものだ。


文徳先輩は仕方なそうに息をついた。



「待ってていいよ。中に入って」


< 363 / 555 >

この作品をシェア

pagetop