PRINCESS SWORD―姫のツルギは恋を貫く―
勢い込んで、小夜子は言った。
「煥さんが来るまで待たせてもらえませんかっ?」
文徳先輩がちょっと悩む顔をした。
「んー、普段はそういうの、断ってるんだけど」
「ご迷惑にはならないようにします! 今日だけでいいんです! お願いします!」
「まあ……約束してくれるなら。だけど、煥が来るかどうか、わからないよ」
「えっ?」
わたしと小夜子は同時に声をあげた。
文徳先輩は栗色の頭を掻いた。
「今日の昼休みの様子だと、歌える感じじゃなかった。あいつの歌、精神面に左右されるからさ、ダメなときはほんとにダメなんだよ。そういう日は練習に来ない」
小夜子が泣きそうな顔をした。
わたしもたぶん似たようなものだ。
文徳先輩は仕方なそうに息をついた。
「待ってていいよ。中に入って」